第 4 章
NARITA AIRPORT 2013
成田空港では増大する航空需要に対応し、国際拠 点空港としての地位を高めていくため空港能力の増強 を図っている。その目玉が暫定平行滑走路の2500m 化であった。 成田空港待望の2500m平行滑走路(B滑走路) は、当初予定の2010年3月から約5ヵ月前倒しして、 2009年10月22日に供用を開始した。2500m化により これまで不可能であった大型機や長距離便の就航が 可能になり、さらに2010年3月からはB滑走路の発着 能力も約1.5倍に増強され、諸外国からの新規乗り入 れや増便が実現した。国際拠点空港にふさわしい充 実した国際航空ネットワークが形成され、お客様の利 便性は格段に向上した。 贈られた。一方、8時40分には新規乗り入れ組の出 発一番機としてチャイナエアラインが台北に向けて飛 び立った。第2旅客ターミナルビルの搭乗ゲートで行 われた就航式典では、紅白の2頭の獅子が激しく舞う 台湾の伝統芸能が乗客らに披露された。 このほか、全日本空輸が中国福建省第2の都市・ 厦門への路線を開設、搭乗口では胡弓の演奏が行わ れ中国ムードを盛り上げた。全日本空輸系のエアー ニッポン(現全日本空輸)とエバー航空(台湾)がコー ドシェアで開設した台北線の式典でも獅子舞が披露 され、乗客らの注目を浴びていた。同日だけで新規乗 り入れ・新路線開設の出発・到着便は10便を超えた。 新規乗り入れの初便は18日以降も続き、ニューギニア 航空(20日)、MIATモンゴル航空(22日)、中国西北 航空(5月8日)などが就航記念のイベントを行った。 一方、国内線では見慣れない小型ジェット、ボンバ ルディアCRJ型機が18日午後6時、仙台へ向けて飛び 立った。これは地域密着を旗印とするコミューター航 空会社フェアリンク(現IBEXエアラインズ)が開設した 仙台線の機材(50人乗り)。このほか、中日本エアライ ンサービス(エアーセントラルを経て、現ANAウイング ス)も名古屋線を開設(使用機材は50人乗りのターボ プロップ双発機フォッカー 50)し、新規乗り入れを実 現した。暫定平行滑走路の供用開始により、国内線 はそれまでの札幌(新千歳)、名古屋(小牧)、大阪(伊 丹)、福岡の2社4路線に新たに仙台線が加わり5社5 路線となった。18日の暫定平行滑走路利用の発着は 87回であった。また、A滑走路の発着は356回で、両 滑走路を合わせて443回に上った。なお、新規乗り入 れにより、国内線を含めた定期便乗り入れ航空会社 はそれまでの35ヵ国1地域54社から39ヵ国2地域(台 湾、香港)68社(2002年7月現在)へと大幅に増えた。 ▲4月18日、暫定平行滑走路供用後の一番機として、バンコク発のタイ国際航空642 便が到着した。中村NAA総裁から祝福を受けるチャイワット機長(写真中央) ▼2500m化し供用開始となったB滑走路 ▲4月18日、エアーニッポンとエバー航空が台北線を開設、新規乗り入れを果たした。 記念式典では華やかな獅子舞が披露された2500m平行滑走路の整備
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146 3. 2500m平行滑走路の整備
長年の懸案だった2500m化
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1) 暫定平行滑走路は2002年4月に供用 空港の発着能力増強を図ることは、国際拠点空港と しての役割を担う成田空港にとって開港以来の最重 要課題の1つであった。懸案の2本目の平行滑走路が 供用を開始したのは開港から実に24年目の2002年4 月18日のことで、まさに「第2の開港」となった。平行滑 走路は本来計画の2500mより短い「暫定」(2180m) という形での運用であったが、年間の発着枠はそれま での13万5000回から20万回へと飛躍的に増加し、ア ジアを中心とした諸外国からの新規乗り入れや増便が 実現した。 モンゴル(MIATモンゴル航空)やパプアニューギニ ア(ニューギニア航空)が国として新規乗り入れを果た したほか、中国の大手3社等が新規参入。国内線では コミューター航空3社が乗り入れを実現した。 2) 制約の多い暫定平行滑走路 暫定平行滑走路は2180mと短いため、B747型等 の大型機の発着ができず、中・小型機が中心の近距 離国際線や国内線の運航のみに使用されるという大き な制約があった。さらに、成田空港の発着回数が上限 の20万回に近づきつつあり、新規乗り入れや増便要求 に応えられないこと、また、このままでは伸び続ける首都 圏の国際航空需要に対応できないこと等を背景に、か ねてより国内外から暫定平行滑走路の2500m化が求 められてきた。 一方、東アジア各国では巨大空港の整備が進んで おり、国際競争力を維持するためにも2500m平行滑 走路の整備は不可欠とされてきた。事実、近隣の東ア ジア諸国の空港整備には目を見張るものがあり、例え ば、2001年に開港したソウル・仁川国際空港は当初 から3750m滑走路を2本整備しており、2008年6月 には4000mの第3滑走路が供用を開始。全体計画 が完了する2020年頃には1本追加する計画となって いる。さらに将来に備えて第5滑走路用の用地も確保 済みといわれる。香港国際空港は3800mを2本持つ。 また、経済成長の著しい中国・上海の浦東国際空港 は4000m、3800m、3400mと3本の滑走路を整備 しているが、全体構想では計5本へと増強する計画で ある。タイのスワンナプーム国際空港は平行滑走路2本 (4000m、3700m)を整備して2006年9月に開港し ている。2500m化が2006年9月に着工
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NAAは暫定平行滑走路(2180m)の2500m化を目 指して、地権者の方々と交渉を続けてきたが、その見通 しが立たなかったため、国土交通省は2005年8月4日、 本来計画とは反対の北側へさらに320m延伸するとの 決定を下し、NAAに指示した。これを受けてNAAは 平行滑走路整備推進本部を設置し、整備に向けた具 体的な準備に入り、10月3日には北伸案の内容や騒 音対策等について公表し、併せて関係市町、同議会、 地元住民等に計100回以上に及ぶ説明を行った。こ の結果、2006年3月には騒防法の第1種区域等につ いて「成田空港に関する四者協議会」(以下 「四者協 議会」という)での合意がなされ、懸案だった騒特法の 騒音対策および発着回数の増加についても、9月5日 の四者協議会で了承されるに至った。この四者協議 会は、国土交通省と千葉県、成田市等空港周辺市町 およびNAAで構成され、成田市内で開催したものであ る。 NAAは2006年7月10日、航空法に基づく飛行場等 の変更申請を国土交通省に提出するとともに、「成田 国際空港平行滑走路北伸整備事業に伴う環境とりま とめ」を公表した。同省はNAAの申請をもとに8月21 日、地元住民など利害関係者の意見を聴く公聴会を 成田市で開催し、内容を審査した結果、9月11日付で 申請を許可した。北側国土交通大臣(当時)をはじめ とした関係者多数の出席を得て、NAAは9月15日に 工事をスタートさせた。2009年10月22日から供用開始
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1) 供用開始予定を約5ヵ月前倒し 供用予定は当初2010年3月とされたが、難関の国 道51号のトンネル切替工事や橋梁進入灯の整備に新 工法を取り入れる等の工夫により極めて順調に進んだ ことから、2009年10月からの冬期スケジュールに間 に合うタイミングで完了する目途が立った。このため NAAは同年5月20日に国土交通省に対して供用を当 初予定より約5ヵ月前倒しし、同年10月22日にしたいと の報告を行った。同省は各施設の完成検査および飛 行検査を実施し、同年6月29日、B滑走路の2500m化 に係る滑走路・誘導路、航空保安無線施設および航 空灯火等の工事完成検査の合格をNAAに通知した。 これを受けNAAは、供用開始を同年10月22日とする 届出を行い、当初予定より約5ヵ月前倒しでの供用が 正式に決まった。 2) 順調な工事 工事では北側への320m延伸のほか、北伸に伴い 滑走路と交差することになる成田市十余三地区の国 道51号トンネル切替工事や、航空灯火(進入灯等)、航 空保安無線施設(ILS=計器着陸装置等)の整備が実 施された。また、大型機の運航を可能にするとともに、 発着回数を増加させるため東側誘導路新設やスポット 増設工事等の関連工事が行われた。第 4 章
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国道51号のトンネル切替工事は2006年12月から 進められ、2008年6月25日に新しい十余三トンネルが 供用開始となった。旅客ターミナル地区と滑走路をつ なぐ東側誘導路の新設工事は2007年2月26日に着手 し、2500m平行滑走路の供用に先立って2009年7 月30日から供用を開始した。 3) 40年余を経て「完成」を迎える 「2500m平行滑走路」は、成田空港建設が閣議決 定された1966年12月に基本計画として決まっていた が、実現しないまま今日に至っていた。結果として暫定 平行滑走路は、320m北側に延伸させた形で、実に 40年余を経て「完成」を迎えた。供用祝い記念式典を開催
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1) 大型機離陸一番機のチャーターツアーも 2009年10月22日の2500mB滑走路の供用開始に 先立って同20日、供用を祝う記念式典が滑走路延伸 部の隣接地で開かれた。式典では冒頭、森中NAA社 長が 「1978年5月20日、成田国際空港は幾多の困難 を乗り越え、A滑走路1本で供用を開始しました。そ の後関係者のさまざまなご努力の結果、2002年4月 に暫定平行滑走路、すなわち2180mのB滑走路が供 用されました。しかし、B滑走路はあくまで暫定的な ものであり、一刻も早く本来計画である2500m化を 図ることが当社の責務であると認識してまいりました。 2500m化することにより大型機の発着も可能になり、 米国西海岸など遠距離目的地にも出発できるようにな ります。2010年3月からは年間の発着枠が22万回に 増大、国際航空ネットワークも充実し機能も強化しま す。この意義のある2500m化が実現できたのも、関係 者の皆さまのご指導、ご鞭撻の賜です」 と感謝の意を 示した。 この後、森中社長のほか、国土交通省の宿利国土交 通審議官、森田千葉県知事、小泉成田市長、相川芝山 町長ら13人がテープカットし、22日からの供用を祝っ た。続いてヒルトン成田で開かれた謝恩パーティーで は、来賓として前原国土交通大臣(当時)が「成田と羽 田両空港が一体となって国際航空需要への対応能力 を高め、ともに利用者を増やし発展していくべきである」 とあいさつした。成田空港では発着枠を年間30万回 に拡大する案を示し、周辺自治体等と検討を行ってい るが、前原大臣は「一日も早く合意がなされることを期 待しています」と語った。その後、関係者らによって「鏡 開き」が行われた。 供用開始となった10月22日には、2500mB滑走 路から初めて離陸することとなる日本航空の大型機 (B747-400型機)による函館行き記念チャーターフラ イトが運航された。B滑走路2500m化を記念するイ ベントとして、NAAが進めるオアシスプロジェクトのメ ンバーが中心となって出発前のセレモニーや機内での 演出、お客様への記念搭乗証明書の配布等が行われ た。 フライト機は、㈱ジャルツアーズが募集した日帰り ツアー「成田空港B滑走路2500m化記念!“1番機に 乗って函館に行こう!”」 に参加する449名のお客様を 乗せ7時に成田空港を出発。到着地の函館では観光バ スツアーが行われた。新誘導路など各種施設を整備
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1) 関連施設も供用を開始 2500m化の工事では、滑走路を北側へ320m延伸 したほか、北伸に伴い滑走路と交差することになる成 田市十余三地区の国道51号トンネル切替工事や、航 空灯火(進入灯等)、航空保安無線施設(ILS=計器着 陸装置等)の整備が実施された。また、大型機の運航 を可能にするとともに、発着回数の増加を可能にするた め東側誘導路の新設などの関連工事が行われた。以 下は主な整備の概要である。 (3つ折りの「施設配置図」参照) 【滑走路延伸部】 滑走路の北側延伸工事では、コンクリート舗装され ている北端部に接続する形でアスファルト舗装を施す 工事が行われ、延伸部は2009年5月に完成した。 【国道51号のトンネル切り替え】 国道51号のトンネル切替工事は2006年12月から 進められ、2008年6月25日に新しい十余三トンネルが 供用を開始した。従来のトンネルでは航空機の重量 に耐えられる強度がなかったため、北側に約40m移し た場所へ重量に耐えられる新たなトンネルを整備した ▲10月20日の供用式典 ▲10月22日の1番機チャーター ツアーセレモニー148 3. 2500m平行滑走路の整備 もので、長さは旧トンネルの約3倍の約430m。約680 トンの航空機重量に耐えられる構造となっている。 【東側誘導路】 旅客ターミナル地区とB滑走路をつなぐ東側誘導路 の新設工事は2007年2月26日に着工し、2009年4月 に完了、同年7月30日から供用を開始した。以前は、 B誘導路1本しかなかったため、出発機はエプロン上で 待機し、到着機が通過してから滑走路に向かうという 交互通行の運用をせざるを得なかったが、東側誘導路 の新設により離陸用、着陸用の誘導路が揃い、それま での交互通行が解消された。また、既存誘導路の改 良も行い、2500mB滑走路の供用時には翼幅の広い 大型機の通行も可能となった。東側誘導路には光源 に発光ダイオード(LED)を採用した省エネタイプの新 型灯火を約1400灯設置した。 【B滑走路の北側進入灯】 B滑走路の北伸に伴い16L側の進入灯も北側へ新 設した。空港の敷地外にある東関東自動車道に橋梁を 架けての設置である。北側の進入灯はこれまでは660 mだったが、標準仕様の900mとしたことで、着陸最低 気象条件が改善された。空港には霧等の悪天候でも 航空機が正確に進入コースにのって安全に着陸でき るようILSが設置されており、航空保安施設の整備・運 用状況により、着陸最低気象条件はCAT Iから最高レ ベルのCAT IIIに分類されている。B滑走路はCAT Iで の運用となっており、北側からの進入についてはこれま で滑走路視距離が700mないと着陸できなかったが、 今回の進入灯の整備により、滑走路視距離が550mあ れば着陸できるようになった。 進入灯のほか滑走路灯、滑走路中心線灯等の航空 灯火も2500m化対応の整備が行われ、2009年10月 22日前夜に旧来の灯火から切替作業が行われた。 【航空保安無線施設】 本格的な滑走路延伸工事にとりかかるためには航 空保安無線施設であるローカライザーやVOR/DME の移設が必要であることから、着工直後にまずこれら の移設整備を進めた。ローカライザーは、着陸する航 空機に対し滑走路の中心延長線上を進入できるよう に直線のコースを示す装置で、2008年3月から供用 を開始。空港の方位を示す超短波全方向式無線標 識施設であるVORと、空港までの距離を示す距離測 定装置であるDMEは同年10月から供用を開始してい る。また、滑走路上の接地点に向け3度の降下角を示 すグライドスロープは同年10月22日から稼働している。 【エプロン】 北伸計画の中で残された施設整備としてはエプロン (約14万5000㎡)の新設工事があり、発着枠の増加 に必要となるスポットの増設工事も同時に進められ、 必要となる13スポットが航空会社の2010年夏期スケ ジュールに合わせて同年3月中に供用を開始した。 このほか、B滑走路工事の一環として、滑走路南側 ではC誘導路(現:B誘導路)の延伸とこれに接続する S8誘導路の整備が行われ、2009年1月15日から供 用を開始している。これらが整備されたことにより、航 空機の第1旅客ターミナル地区のスポットからB滑走路 へ、第2旅客ターミナル地区のスポットからA滑走路へ の相互通行がスムーズに行われるようになった。
発着枠は両滑走路計で22万回へ増大
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1) 大型機や長距離便の就航が可能に 滑走路長が2180mから2500mへ延伸されたこと で、離着陸時の滑走距離を長くとることができるため、 離陸便については燃料搭載量を増やすことができるよ うになり、航続距離の延長が可能となった。これに加 えて離着陸可能な機種が増えるため、既設の取付誘 導路を改良しB747型等の運航が可能になった。出発 では米国西海岸までの路線が、到着ではほぼすべての 路線が就航できるようになっている。万が一、A滑走 路が閉鎖された際には代替滑走路としての機能を果 たせるメリットもある。 2) B滑走路の発着能力は1.5倍に 発着能力が増大するのも大きな利点といえる。 2500m化によってB滑走路の年間処理能力はそれま での年間6万5000回から約1.5倍の年間10万回まで 拡大可能となった。A滑走路は年間13万5000回のま まだが、両滑走路で年間合計23万5000回までの発着 が可能となった。ただし、年間の発着枠の上限につい ては、2006年9月5日に開かれた成田空港に関する四 ▲北側に設けられた橋梁形式の進入灯第 4 章